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水中魚と青年
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作詞 夢視 柊 |
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街中(まちなか)に浮かぶ一つの灯が
私を泡沫の中へ
流れた泪は誰のモノ?
拭ってあげましょう
そう想っていても 私は魚で
陸の上の貴方には届かない
貴方の流れた滴が私の水の中へと
吸い込まれて染み込んでゆく
溶け込んだ涙を呑んで私は生き永らえる
貴方は私の欠けを埋めてくれたけど
貴方の心は満たされぬまま、
朝が来る前には泣き止んで、あの人の元へ還るの?
町中に響くサイレンの音が
私を無言(しじま)の闇の中へ
汚れた手のひら誰のモノ?
包んであげましょう
そう想っていても 私は魚で
立ち尽くす貴方の傍にも行けない
貴方から滴り落ちた真っ赤な滴は地面へと弾かれ
吸い込まれず拡がってゆく
水の中に溶け込んだなら私も苦しみを味わうことができるのに
貴方は私を綺麗だと褒めてくれたけれど
貴方の笑顔は見えぬまま
夜が来る前には心無くして、深夜徘徊するの?
やがて貴方は来なくなり透き通る水は濁って
私も汚れて貴方の苦しみも抜き取れぬまま
時は経ち衰えて悔いたのは私が魚で在ったこと
零れ落ちぬよう差し出せる手もなく
独り堕ちていく貴方の傍に駆けてゆく足もなく
愛すらも語れぬ口からは泡が漏れた
貴方の流れ落ちた泪が私の水の中へと
溶けて消え私はそれを呑み込んだ
流れてく真っ赤な血は
貴方への罰とでもいうように
錆となってはりつくから
それごと包み込んで 果てて逝きたいよ
貴方は私の欠けを埋めてくれたけど
貴方の心は満たされぬまま
朝が来る前には泣き止んで、
あの人の元へ還るの?
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