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絵日記
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作詞 Dr.Fear |
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掠れたインクに気づかぬフリをして
僕は日記を書き続けていた
消しゴムでは消えないけれど
薄くて読みづらい文字
所々ハッキリ読めるけれど
文脈は分からない
その上にある大きな枠に
大袈裟に描いた絵を
色とりどりのクレヨンで彩ってゆく
絵の具じゃ滲んでしまうから
僕はクレヨンを滑らかに走らせる
いつかこの日を思い出して
涙の粒を落としてしまっても
大丈夫なように
この絵日記を今読み返せば
辛い気持ちも和らぐだろう
生き生きとしていた自分を
思い出すことができるから
この絵日記を10年後に読み返せば
ひとつの物語として
誰かに話せるだろう
読めなくなった部分を
自分に都合よくすげ替え
あたかも自分が
被害者であるかのように
誰かに語れるだろう
微かに響くページをめくる音
その音がまたひとつまたひとつ
僕を偽者にしてゆく
この幸せそうな絵日記を書いた人が
この自分だなんて
信じられないから
手もとを照らす明かりは
僕のペンにつられて
揺らめいている
語りかけたいけれど
思うように舌が動かない
それを寒さをせいにして
震える手もとを温める
永久に永久に永久に
幾千の白紙を染め上げる
積み重なった古びた日記の山は
今にも崩れ落ちそうだけど
大袈裟な絵の枠の中では
僕はだんだん小さくなっていって
荒っぽく描かれるようになった
それと反比例するかのように
君はどんどん大きくなっていって
細かく描かれるようになった
それが僕の想いを
強く表していたらしい
最後のページには
僕はもう絵の中にいなかった
そこには
そっぽを向いた君の背中が
小さく小さく描かれていた
最後のページだけモノクロで
20年後
いや30年後なら
この絵を冷静に見つめ
塗り絵をすることができるだろうか
今はただ涙を落とし
輪郭を滲ませることしかできない
徐々に歪んでいく背中を
ただ見つめながら
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