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生体兵器<バイオウェポン>
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作詞 鮫子 |
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気が付けば気泡の渦 カプセルの中
丸くうずくまって漂う様は さながら胎児
ガラス越しに大人達はあやす
”おたんじょうび おめでとう”
六つのお祝いにもらったのはベッドと、窓も無い真っ白な部屋
ドアを閉じられた瞬間
急に部屋が広くなったような気がした
次の日 皆でゲームをした。
ぼくと同じ歳の、同じ子たち。
一番最後まで呼吸をしてる子が褒めてもらえるんだ
小さな手を凶器に変え ゲームが始まった
その時初めて見た色にぼくは戸惑った
鉄のような匂いと やけに体にまとわり付いて離れない感触と
心臓を潰すように錯覚させる色だった
ぼくは一番最後まで呼吸をしていた
腕とお腹の一部が無くなったけれど ぼくらに痛みは無い
一日もあれば元通り
「最高傑作だ!」
真っ白な服を着た大人の人たちはぼくを褒めてくれた
次の日も同じ事をした
次の日も その次も日も
褒めてもらっても嬉しくなかった
やがてぼく以外の子供はいなくなって
褒められる事もなくなった
どうしてか 安心してた
ぼくは一人 広い真っ白な部屋の片隅で小さくなって震えた
血液中に流れるナノマシン ベースは本物の子供
『人類の最高傑作』
実験の結果 その予想を遥かに超える力は危険物と断定され
ぼくは処分される事になった
ずっと考えていた
「お母さんとお父さんは何処?」
「家は何処?」
「ぼくは誰?」
すすり泣くような声は
沈黙に吸い込まれた
どうしてだろう ドアが開かない
心臓が痛い ぼくに痛みは無いはずなのに
どうしようもなく痛い
きっと何処か壊れたんだよ 早く治して
痛くて 苦しくて 寂しくて
熱くなった瞳から透明な液がとめどなく溢れた
世界と遮断された部屋の中で ぼくの声は誰にも届かない
ある年の ある日 ぼくは機能停止した
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