|
|
|
虐待
|
作詞 鮫子 |
|
雪色に染まる街 クリスマスの夜
肩を通り過ぎてく親子の中に 何年か前の僕と、母と、父を見た
家族は幸せそうに笑っていて そこには悲しみも苦しみもなくて
僕は無意識に手を伸ばしたけれど
どうしてこんなことに?
どうして体中が軋む?
凍てつく風にさらわれた”あの頃”には
もう 夢の中でしか帰れないんだね
真っ赤なフローリング 暗い部屋とテレビ
父さんが”家族より大切な人”とどこか遠くに行ってから
母さんはずっとテレビにくっついて 僕は全身痣と傷だらけになって
今日は殴られる?蹴られる?殺される?
いつしか痛覚も麻痺した
いつしか声が出なくなった
そのうち息も止まったりするのかもしれない
涙も心音も止まらない
幸せの続きが思い出せない
もう一度あの頃に帰りたかった
僕と母さんと父さんと この家で
もう一度手を繋いで歩きたかっただけなのに
現実ばかりが残酷で
母さんは僕を殴らなくなった 話しかけてくれなくなった
僕は空気
まるでそこに居ないかのよう
胸は苦しくなるけど心臓が止まるわけじゃない
止まってくれたら楽なのに
涙を溜めた瞳で 乞う
「ねえ、ねえ、ねえねえねえねえ」
次の日から本当に声が出なくなった
街に飛び出して助けを求めても 人々は僕の眼を見まいとする
幸せだったのに
どうして どうして どうして
どうして…
夜の街に僕はひとり
凍えて死んでしまわないように
思い出を抱き寄せて 深い眠りに付いた
|
|
|