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ある男と人魚のお話
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作詞 実輝 |
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『人魚の肉を食べれば、不老不死になれる』
それを聞いた人々は、人魚を探し求めた。
そんなある日、美しい女が
貧しい男の破屋にやって来た。
女は男にこう言った。
「金がたくさんほしくはないか?」
美しく、穢れのない女を捕まえればいい。
そしたら金ももらえて、肉を食べて不老不死にもなれる。
「たくさん金がもらえて死なないのなら喜んで引き受けよう」
海に罠をしかけて、時が来るのを待った。
すると、出てきたのは見たことがないほどの美女。
その女には足がないのだ。
本物の人魚を見つけてしまった。
人魚は罠に近づいた。
みごとに罠にかかったのだ。
美しく、穢れすらない美女だ。逃がさなければ。
そう思った男は、罠をはずし、人魚を抱えようとした。
「お前、どこへ行くつもりだ!人魚だけは渡さんぞ!」
それを聞き、抱えて走り出した。
後ろからたくさん追いかけてくる。
行き着くは森の奥の罠。
捕まってしまったのだ。
女を裏切っていた男は
最後まで人魚を守り続けた。
切っ先を向けられた男は
最後に人魚に微笑んだ。
それから人魚がどうなったのか、誰も知らない。
人というものは寿命があっての人なのだから。
不老不死などなくていいと命を持って教えてくれた。
−ある男と人魚のお話−
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