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焔
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作詞 鬼之子 |
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すわ 息吹を立てよ
瞋恚(しんい)の神が朦朧(もうろう)と
瑞相(ずいそう)を待たずに衰亡(すいぼう)する
灯籠 水明は白濁したまま
瑞夢(ずいむ)が先の花の雲 焔が燃ゆる
「破魔弓を引け!」
罅(ひび)割れた 明かずの暁に
閼迦棚(あかだな) 添えるは悲願の灯
綾なす 謳歌 殴殺
流るるは懊悩が逢瀬の刻
神を称える 水子は贄と成りて
返す返す 堵列は緘口(かんこう)を絶える
神を称える 寡婦(やもめ)は虚笑(ぎしょう)を挙げて
堂々巡りの朧月夜に意趣(いしゅ)を持つ
螺旋状態の人々は交喙(いすか)の嘴(はし)の食い違い
幼気(いたいけ)な芽さえも摘み取って
漁(いざ)り火と共に三途に流し潰す
狂い合い 失った優しささえも
笑う対象に変わるのだろう
こんな腐った塵芥(じんかい)の現(うつつ)を神は
見向きもしないだろう
神を称える 水子は贄と成りて
返す返す 堵列は緘口を絶える
神を称える 寡婦は虚笑を挙げて
堂々巡りの朧月夜に意趣を持つ
優しさは浮き世の塵と成り
悲しみは浮き世の風と散り
思いは浮き世の波と共に
来世邂逅(らいせかいこう)の鯨幕(けいまく)と成る
神を称える 水子は贄と成りて
返す返す 堵列は緘口を絶える
神を称える 寡婦は虚笑を挙げて
堂々巡りの朧月夜に意趣を持つ
神を称える 諸人(もろびと)は夫々(それぞれ)の
焔を点し乍ら暗闇を歩き続ける
神を称える 猿は原始の魂を
捨てる事は出来ず ただその場で潰れる
総(すべ)ては始まって そして終り また始まる
その繰り返し 途切れる事のない煩悩
幻燈(げんとう)に映し出された 人々の既遂(きすい)は
総て神が造り上げた 理(ことわり)の流れ
絡み合う 小糠雨(こぬかあめ)に濡れる
それでも 焔は点り続ける
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