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絶望を売る画家
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作詞 ヴォノ |
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絶望まみれの絵を 天才画家が今日も売る
「ぼくに描けぬ絶望は ない…」
道ばたの天才に 今日も少女が駆け寄る
町いちばんの人気者 みんなが愛してる
「今日もあなたの絶望に挑戦よ」と 彼女
一月まえから毎日ケチをつけに来るのだ
絶望まみれの新作を 天才画家が見せてやる
「どうだ、両腕を失くした騎士の絵だ」
道ばたの天才に 今日も少女が希望を口にする
「両腕を失くしたのなら もう人を殺さなくてすむわ」
「ひとつも希望を見出せない絵なんてないのよ」と 彼女
今日も画家は何も言えなくなってしまう
後日 新たな絶望を 天才画家が見せてやる
「どうだ、死ぬ瞬間の男の絵だ、絶望だ」
道ばたの天才に いつもより疲れ顔で彼女は言う
「それならこの人は二度と死ななくてすむわ」
「もう死ななくていいし、もう苦しまなくていいわ」と 彼女
とうとう画家は あきらめてしまう
「きみは幸せしか感じたことがないのかい?」
「きみの言うように 絶望しか見出せない絵なんてないのかな?」
気付けば 彼は少女を愛しく思っていた
彼女のために絵を描き続けていたのだ
しばらく来ない彼女を 天才画家が今日も気にする
いろんな人に彼女のことを聞いてみる
道ばたの天才が 彼女の死を知る
彼女はずっと 病気の身だったのだ
病身でありながら 希望を見続けた少女
その日から画家は一枚の大作を描き始める
人生最大の名作 最後の名作
これに勝る絶望など この世には、ない
完成した絵を前にして
天国の少女に向かって 彼はつぶやく
「なあ 見えてるかい?この絶望が見えるかい?」
「いくら無邪気なきみでも
この絵には希望のカケラも見えないだろう…?」
天才画家の描いた最後の絶望 それは
彼自身の自画像
その絵のタイトルは
「きみを失ったぼく」
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