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マンボウと私
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作詞 ふゆ |
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受話器越しに語る声 あなたはただ寂しく
「これが夢なら二度と覚めたくないんだ」
静かに流れる空気の音 私はそれを沈黙と捉えて
窓際に寄り添って 青い空眺めた
あの街はまるで 水槽の中
人混みを避けて歩く 君の面影が
日の光を浴びて 形を失っていく
あたたかなその目 優しいその声
私を包み込んでいたのに
いつの日か涙が 止まらない悲しみが
仄暗い宙を見据えていた
「もしも僕の傍に居て 君が悲しむのなら
この間にガラスを張ってしまいたい」
そうやっていつものように涙を呑む 受話器の向こうの言葉
ただ呆れるばかりの 大きなあぶくが
小さな嘘で あなたを傷付けた
アクアリウムに染まる 夜の真ん中で
その深くで眠る 流されるまま眠る
それは鮮やかで それは臆病で
とても繊細過ぎた身体が
空気を求めて 塵の中泳ぐ
まるで魚のように――
脆いようで 何も考えちゃいない
あなたのことは マンボウと呼ぶべきね
今更過ぎて まるで笑えてしまう
私は既に あなたのせいで
毒されているというのに
何も言わないで それで良いんだよ
ここで私は幸せなのに
あなたは泣き出して 私は沈むの
あまりにも深すぎる海へと
ねえ見上げてみて そうもがいてみて
まるで夢のような空がほら
傍に居させてよ 傍に居させてよ
この広すぎる水槽の中で
世界を見たフリしていようよ
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