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羊たちのエスケープ。
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作詞 雫依瑠子 |
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都会を瞬く間にさらっていくビル風は、
いつだって僕等を途方も無く不確かな感覚の中へと突き落とす。
曖昧で空虚な現代と、
依然として凛としてそこに佇む自然の存在。
明日への不安を何よりも色濃く提示されて、
僕等は何も出来ず、
ただ互いの服の裾を、
強く、
強く、
握り締めた。
もはや星なんて見えなくなった都会の空にさえも、
何故か僕等はいつの日も願いをかけ続ける。
遠く遥か、その彼方に在る何かに必死に心を馳せる一途さ、
それだけが、
僕等を繋ぐ一筋の道標だったとしたなら。
いつの時代になっても、
誰もが求めて止まない小さな温かさ。
いつか、
人間の辞書から「恋」という言葉が消える時代が来るのかも知れない。
そうなる前に僕等が出逢えた事は、きっと何よりの幸せ。
機械仕掛けの時計なんて、その気になればいくらでも止められる。
規則正しさ、
正確さ、
それらを何よりも清いと定義する時代より前に途中下車を許された僕等には、
きっと恋をする資格があるから。
強く、
強く、
強く、
信じている、切実に。
初めて処理する「恋」というタイトルのデータに戸惑って、
許容量を超えてはパニックを起こしている世間のコンピュータ達。
彼等を無視して、僕等は駆け抜けていく。
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