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正しくない人の詩
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作詞 音マヨ |
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暁の薄暗い船の上で 少女が問う
「あなたの 一番大切なものはなに?」
彼が答えると 少女はいう
「人の命が そんなに大切?」
陽の照らない朝の海を
森羅万象を乗せて 走る 船
もの憂い 脆く尖った波止場で 彼は主張する
「人間ほど すばらしい生き物はいない」
少年は 首を振り答える
「人間ほど すばらしくない生き物はいない」
また一つ 分岐点を越え
期待とは裏腹に 進む 船 回る 回る・・・
どうだ おもしろいかい?
そりゃそうさ 少女は 少年は 彼は 僕であり あなただ
さて ストーリーはまだまだ続く
少し怖いだろうが さぁ 一緒に
澱んだ紫の海を見ながら 彼は思う
「この海は 何故こんなに汚いんだ?」
となりの男が 笑顔で呟く
「この海は とっても奇麗さ」
彼は腹が立ってきた
そんなことには目もくれず 走る 船
痩せこけた 難民の子どもに向かって 彼は問いかける
「生きてるのが つらくて苦しいだろう!」
子どもは きょとんとして答える
「生きてるってつらくて苦しいの? 僕知らないや」
目的地は 平和島らしいが
そんなとこに向かっているようには見えない 前も 後ろも・・・
飽きないでほしいんだ
だってさ みんな みんな みんな みんなであり みんなだ
さあ ストーリーはそろそろ終わりだ
悟ることになるんだ 彼は ようやく
彼は頭を抱え込んでしまう
どうしてみんな 正しくないことを言うのだろう?
意見は食い違ってばかり いや まてよ?
私の意見は 正しいのか?
そもそも「正しい意見」なんてものが
世界に定まっているのか?
正しい意見ってなんだ?
正しい意見なんて存在するのか?
そして彼は一つの持論にたどり着いたんだ
正しいなんてものはなかったと
そして 正しいものはない という考えさえ
正しくはないんだと
はっきりしないんだ 曖昧なんだ
だからこそ彼は 誰の意見も否定せずに
自分の意見を大事にしていけばいいと
彼なりに 答えを出したんだ
僕はこの物語に「正しくない人の詩」と名をつける
そろそろお別れの時間だ 名残惜しいけど
さようなら また会う日まで
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