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電話
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作詞 マグ、 |
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ガラス張りの密室。
息の詰まる個室で。
雨を凌ぐ僕と、
雨に打たれる君と、
どんな音も掻き消される音の中で眼が合った。
何時も買う銘柄の、その煙草には、中々火が着かなくて。
でも、彼女の濡れて透けるブラウスに、眼を奪われていた。
足元に忍び寄る水溜まり。
耐え切れない騒音が支配する沈黙の空間に、
意味も無く受話器を手に取って。
意味も無くカードを差し込んで。
意味も無くボタンプッシュする。
アトランダムに打ち込んだ番号は。
何処に掛かるとも知らないが。
微かに流れるメロディ。
僅かに聞えるラブソング。
再び見詰め合う僕等は。
道路に阻まれて決して出会う事は無いけれど。
「こんにちは」
聞えたんだ。確かに。
冷たい夜の公園。
息も凍る空間で。
雨に打たれる私と、
雨を凌ぐ貴方と、
どんな心も伝わらない闇の中で眼が会った。
貴方の持つ煙草の、その銘柄は、別れた男と一緒で。
でも、貴方のシロガネに照るライターに、心を奪われた。
心身を蝕む水音に。
耐え切れない騒音が支配する沈黙の空間に、
意味も無く携帯を手に取って。
意味も無く待受けを見守って。
意味も無く誰かを期待する。
何処から掛かるとも知れないが。
胸を貫くメロディ。
涙を誘うラブソング。
再び見詰め合う私達。
道路に阻まれて決して出会う事は無いけれど。
「こんにちは」
聞えたわ。確かに。
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