|
|
|
ピーターパン
|
作詞 ryo-2 |
|
小さな頃思ってた。「ピーターパンになりたい。」
いつからか世界が棘だらけってことに気付き始めて、<大人>の鎧を買ったんだ。
あれから長いこと着てんだ、傷つくのが怖くて。もう脱ぎ方も忘れちまった。
ぶかぶかだった鎧も今じゃ俺の体にフィットしてて、中から見える小さな視界にも慣れた。
腰に提げてる錆びた剣は棘を斬るために買ったんだ。きっと世界を変えたかったんだ。
今俺が斬っているのはいつまでも大人になりたがらないもう一人の俺。
もちろん体は無傷さ。今度は心をしまう頑丈な金庫を買うつもりなんだ。
ある日、血だらけになりながら棘の中を走る君を見た。譲れないたった一つの心を抱いて。
「君も鎧を買えばいいんだよ。」小さな視界から見える君に言ったよね。
「どうして君の心は傷だらけなんだい?」君に言われて初めて気付いたんだ。
僕が棘だらけの鎧を着て自分の心を抱きしめていたことに。
次の日も君は棘の中を走っていたね。きっと君みたいな人が世界を変えるんだと思ってた。
「君も鎧を脱げばいいんだよ。」小さな視界から見える君は言ったよね。
「どうして君の心は無傷なんだい?」君に抱きしめられて初めて知ったんだ。
僕の棘だらけの鎧がたくさんの人を傷つけていたってことに。
あの日から毎日のように遊んだね。僕は君を傷つけないように気をつけたんだ。
君は僕の心を抱いていてくれたね。きっと君がピーターパンになる人なんだと思ってた。
僕はそんな君の隣にいられるだけでとても幸せだったんだ。
あれは雨の日だったね。大きな棘が胸に刺さって君は動けなくなっていたんだ。
僕は剣で棘を切ろうとしたけど剣は棘の硬さで折れてしまったんだ。
ただ泣きつくす僕を見て君は言ったよね。「僕の心を届けてくれ。」
二人でよく話してたよね、<ネバーランド>について。永遠の憧れだって。
君が逝ってからどれくらいたっただろう。もう少しで着きそうだよ。
両手に二人分の心を抱いて、血だらけで棘の中を走っているよ。
君の心を残して<大人>になんてなれなかったから。ほら、もう憧れの地だよ。
今も思ってたんだ。「ピーターパンになりたい。」って。
|
|
|