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少年
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作詞 櫂 |
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窓ガラス越し眺めた校庭の真ん中に
立ちすくむ少年を見ないように目を逸らした
彼の視線の矛先が途切れているの気づいたのは
どうして昨日じゃなかったのだろう
チャイムが鳴って少年が視界から姿を消した
その時なぜかもう彼が戻ってこないような気がして
ざわめく胸騒ぎを止めなくては次の国語に身が入らない
機械的に口を動かして拙い発音で読む英語より流れるような日本語を子守唄にして少年を思う
彼は明日も一人で立ちすくむのだろうか・・
白い文字を写すより大切なことがあるのにと
どうして私は誰にも口に出来ないのだろう
チャイムが鳴り散り散りになった生徒のお喋りがひどい雑音のように耳に残って消えない
私はその雑音を聞き分ける術もなくただ彼を思った
彼がさっき言いたかったことを私は知ることになる
紙面を騒がせた事件の犯人が捕まった
14歳の少年
教師はお決まりの言葉を並べばつ悪そうな表情を浮かべた
その日から心ない言葉の嵐と不条理の洪水が彼という人間像を一人歩きさせた
あの日から私は学校という戦場から去った
彼のいない校庭は色あせた古い写真
あの日彼の言いたかったことを私はとっくに知っていたのだ
彼の視線の矛先の続きはこの戦場ではなかったことを
私は彼のいた空間の一部分の彼だったのだから
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