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カメラ越し
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作詞 深衣 |
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悴んだ指先が赤くなって、マフラーからはみ出した首も冷たくて、
一人で自転車こいでいるときに、空が綺麗だから携帯を出して写真に残していた。
きっと残しておきたいんだと思う。何もかも。
生きた証が欲しいんだと思う。
冷たい壁の地面に見つけた名前さえも知らない草。
カラフルに落書きされた壁とそれは対照的で、地味でそれでも懸命に生きていて、
素敵だった。
枯れるときも、誰にも知られずにひっそりと枯れていくんだろう。
赤い派手な花びらをつけるのでもなく、小さな緑の蕾を持って。
地味に生きて、誰にも知られずに死んでいくのは耐えられない。
発狂してしまう。
生きた証を求める私にとって、それは紛れもなくありえない生き方だった。
けど、空が遠いと感じるのは、きっと空をあまり見ないからだ。
この草は空さえも近いと感じられるのだろうか。
携帯に残した写真でしか空を見られない私は、空の絶対値を知らない。
時間に流されて、感情も何もない草を哀れだと言うには、私はあまりにも惨め過ぎた。
毎日いじめのニュースを聞き流す。
偽善者な大人が、何を言う。
簡単に、口から発せられる言葉に重みすら感じない。
かっこつけてテレビに出る先生が何を教えられるの?ばかばかしい。
問題など何もない、ただ朝が辛い。毎日同じ生活が不毛に感じる。
そんな私は、あまりにも。
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