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大人の汚さ
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作詞 由己 |
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じいちゃんが倒れた
そう聞いたとき
「自業自得だ」と本気でそう思った
毎日毎日酒を飲んでは家に帰ってきて
母さんや俺たちに罵声を浴びせ続けた
泣いたことも 言い返してやったこともあった
でも 母さんを含め 大人たちはみんなこう言う
「我慢しなさい」
おばちゃんたちは都合のいいときばかりうちに来る
じいちゃんが癇癪を起こせば
知らない間に消えてゆく
そしてこう言う
「悪いけどよろしくね」
悪いとなんか思ってないくせに
じいちゃんが入院した後もそうだった
じいちゃんの世話をしたのは結局母さんだった
一番苦しめられているはずの 母さんだった
おばちゃんたちは何をしているかと思えば
たった一日二日の看病で
疲れたとぬかして 家に閉じこもっていた
神様 助けてください と何度言ったことか
きっと心から笑ったことよりも 多い
自業自得だと思っていたじいさん
病室に入ると 見るも無残な姿になっていた
これがあのじいさんなのか
人間は皆こうなるのか
たくさんつながれた管
息の音なのか 機械の音なのか
生きているのか 生かされているのか
訳もわからないまま 涙が出た
薄情なおばちゃんたちが言った
泣いちゃだめよ、手を握ってあげなさい と
俺には無理だ
だって病室にあふれているこの音が
涙を誘うから
虚ろな目をしたじいさんが
生きているのが怖かった
生かされている人間が 異常に怖かった
その日の夜にじいさんは死んだ
もう半年が過ぎようとしているが
まだ続いている汚い会話
姉弟で遺産を取り合ってる
ついに俺たちが暮らしたあの家が
おばちゃんの一人の手に渡った
ばあちゃんが死んだときもそうだった
あいつらは俺らのことは何も考えてない
どんなに頑張って面倒見ても
結局何もしてないやつらが全部持ってく
別に遺産が欲しいわけじゃないけど
姉さんの成人式に着せようと
ばあちゃんが買っておいた反物も
おばちゃんが知らないうちに持っていった
あいつらは
俺らの苦労も 喜びも
思い出も何もかも
全て奪ってく
心がすさむ
今日も両親の怒鳴り声が響く
心をやられた両親の叫びが。
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