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悲しいチーター
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作詞 BOSS |
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力強く地に立つ、ひとりの少年
それはどこか、草原のチーターを思わせた
そして華奢で力のない小鹿も、その草原にちゃんと居た
100メートル28秒 全速力でこの記録
クラス平均とは12秒差 それでもアイツは何でもない風に
して前を向く
列に戻るときずっこけて 膝小僧が土だらけ
皆に大声で笑われる アイツはムッとした顔をつくり後は
それ切り
「辛くないのか?」 こっそり一度聞いたとき アイツは
俺にこう言ったよ
「帰り道でちょっと道草してけば、大丈夫なんだ
見上げた空に浮かぶ変な形の雲 セメントから生える強
い命
ほらね、悲しんでなんかいられないよ」
休み時間は図書室に通い 真剣な顔でページをめくる
黒ぶち眼鏡のその奥は ちょっと長めの睫毛にキラリ光
る瞳
掃除のときいつも雑巾がけ 足が凄く疲れるのに
バケツかたずけもゴミ捨ても 小さく頼りない身体で一生
懸命やってる
「無理すんなよな」 そっと言ってやったとき 思わぬ言
葉が返ってきた
「本当はこれ、秘密の特訓なんだ! 家でも練習してん
だぜ?
なんたって僕は100メートル28秒 でもすぐに早くなるんだから
いつかさ、キミの事だって負かすから待ってろよ」
「あんまり笑わせるんじゃねぇよ、12秒差が
俺は平均よりずっと早いんだ 一生かかっても越せるも
んか
それでも…ちっとくらいは信じてやっても良いな」
あぁお前は本当に早くなったよ 秘密特訓のおかげかな
俺がどんなに走っても 絶対に辿り着けない所に行っち
まったんだ
始めは信じたくなくて 次は馬鹿みたいに泣き喚いたりし
て
涙がかれてから アイツの声が聞こえたんだ 「早いんだ
ろ?僕を越してみなよ」
「だから俺はこうして走ってるんだ 早くなる為に
なんたってアイツは100メートル28秒 あっという間に追い
越してみせる
すぐにさ、遠くのアイツを悔しがらせてやるから」
いつだって辛い顔を見せず 前向いて強気のアイツには
倒れるまで走り続けようとも 追いつけもしないというの
に
悲しいひとりのチーターは 永遠(とわ)に草原を駆ける
今日もまた
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