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スパイクシューズ・バッグ
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作詞 柊 木葉 |
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遠い記憶の中の色。この色は何色?
青いあおい、この色は
「まっさお」じゃない、「コバルト」じゃない。
綺麗な純粋な、透き通った「そらいろ」。
雲が滑らかに作るグラデーション。
ぽん、と、白黒のボールが宙を駆けて。
その下に、まっさおのユニフォーム。
あなたの背番号。忘れられない、くっきりとした白の「8」。
ユニフォームの青に浮かび上がるその数字。
「キャプテン」を表す、赤いリストバンドがチラついて。
どんなに他の選手が走っても、どんなにゴールを決めても、
私はそれだけを見ているから。
指示を出す大きな声、他の選手達を追い抜いて走る後姿、
ボールを見つめる大きな瞳。
すべてが私の目をさらっていく。
そして、ふっと
ボールを見つめていたあなたの瞳がこっちを向くの。
私に気づくとあなたは、人なつっこい笑顔を見せて、
親指を立てた腕を振り上げる。口パクで「みてろ」といいながら。
高校に入ってから、またサッカーを始めたことを聞いた。
中学時代最後のサッカー。負けてしまった最後の試合。
私はもう傍にいないけど、傍に行くことはできないけれど、
またあの頃のような笑顔で、頑張っているのかな。
雨降りの泥土の上で練習していたあの日のように。
西日を受けて校庭を走り回ったあの日のように、そして、
あの空色の中で試合をした、あの日のように。
青いあおい、この色は
「まっさお」じゃない、「コバルト」じゃない。
綺麗な純粋な、透き通った「そらいろ」。
雲が滑らかに作るグラデーション。
そして、あなたの目印。
黄色のスパイクシューズ・バッグが、校庭の隅にころがって…。
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