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赤いスケッチブック
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作詞 安芸いろは |
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目覚めよい朝に
窓を開け空を見る
空は
青かった
そして
窓際のアサガオも
置きっぱなしのマグカップも
ゆれるカーテンも
すべて美しい青なんだ
青い海風がびゅうと吹く
するとどさりと足元に
幼き妹の物であろう
小さなスケッチブックが落ちた
青い青いスケッチブック
ほとんど未使用のスケッチブック
ぱらりぱらりとめくっていくうちに
一枚の絵を見つけた
一面青塗りの絵
今私が見ていた景色を
あの青い空を
あの青い海を
妹は描いたのだろう
しかしその絵には
たいへんおかしな所があった
青い海の上の
青い空の真ん中に
一つの赤い円
この円は何だろう・・・
母は言った
この円は 太陽 だと
私は納得がいかない
だって太陽は青いのだから
この窓から見える
青い海の
その上に広がっている
青い空の
真ん中にある太陽は
私の大好きな青色なのだ
60年前にこの場所を包んだ炎と同じ
無数の爆弾の雨が降ったあの時の空と同じ
あの日妹の顔中から流れた血と同じ
赤色ではないのだ
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